ペガサスちゃんが歌う『翼も角もなくたって』とは
映画、大変面白かったですね!
『たべっ子どうぶつ』の物語には、3つの劇中歌とTravis Japanの主題歌が登場します。
この記事のメインでは、ぺがさすちゃんが静かに囚われの部屋で歌い出す『翼も角もなくたって』にフォーカスして考察を行っていきます。
映画を見終わった後であるからこその気付きがある歌詞を追いながら、彼女の心の変化と、仲間たちとの関係性にどんなドラマが隠されていたのかを丁寧に掘り下げていきます。
「憧れ」に隠された本音
囚われの城の最上階。
小さなゴットンに羨望のまなざしとリクエストを受け、ぺがさすちゃんはそっと歌い始めます。
おそらくぺがさすちゃん自身が書いた歌詞と思われるこの歌は、ぺがさすちゃんの本音が見え隠れしています。
ねえ 聞いて 本当は ずっと 憧れてたの
映画『たべっ子どうぶつ』劇中歌『翼も角もなくたって』より引用(一部)
翼もなく 笑ってる君が うらやましくて
まず注目すべきは、この歌が「憧れ」から始まっていることです。
ここでの「君」とは、観る人によって受け取り方が変わるかもしれませんが、物語を追うとらいおんくんの存在が浮かび上がってきます。
ぺがさすちゃんはユニコーンという架空で希少な存在。
一般的にユニコーンは「力と純潔」「無邪気さと純粋さ」の象徴とされています。
しかしその反面、孤独を背負いやすい存在でもあります。
彼女が羨ましがる「翼もなく笑っている君」は、飾らずに自然体で人を惹きつける、らいおんくんそのもの。
彼の明るさ、表情豊かなパフォーマンスは時に空回りしつつも、仲間たちの中心となっていました。
一方でぺがさすちゃんは新しい風であるが故に、ひょっとするとオカシーズに変身してからも周りになじめない時期もあったかもしれません。
希少であるがゆえの距離感や、夢を持つがゆえの孤独。それを感じ取る一節です。
「違う色が混ざり合う」たべっ子どうぶつの世界観
ひとり ひとり 違う色 混ざり合い絵画になる
映画『たべっ子どうぶつ』劇中歌『翼も角もなくたって』より引用(一部)
それから生きると言うこと 自分の価値を知ること
ここはまさに、『たべっ子どうぶつ』の世界そのものを象徴しています。
カラフルで多様なオカシーズと人間たちが暮らす町並みは、絵画のような彩りがあります。
しかし、敵であるわたあめ軍団に支配されてしまうと、町からその彩りが徐々に失われてしまいます。
彩りが減っていく描写は、多様性を受け入れられない事の象徴であり、映画全体のメッセージの核の一つでもあるでしょう。
そしてぺがさすちゃんが歌う「混ざり合い絵画になる」という言葉は、個性的なメンバーたちが次第に心を通わせ、違いを力に変えていく過程そのもの。
彼女自身も、たとえ強さ故に浮いてしまっていたとしても、仲間たちとの関わりを経て、その色が一つの絵の一部になっていくのです。
笑顔の裏の孤独」ぺがさすちゃんとらいおんくんの共鳴
その笑顔は 孤独の痛みを知っているからこそなの
映画『たべっ子どうぶつ』劇中歌『翼も角もなくたって』より引用(一部)
君はさ 解ってないんだよ 君が思う以上に愛されてると言うこと
ここでの「君」に対する言葉には、優しさと少しの切なさが混ざっています。
笑顔の舞台裏には、痛みが隠れている事もある。それでも誰かのために笑えるという強さ。
それはらいおんくんにも、ぺがさすちゃん自身にも当てはまる言葉です。
らいおんくんの過去を思い出すぞうくんの回想__。
らいおんくんが、かつてひとりで小さなライブをしていた…。
昔から気持ちの根っこにある「誰かを喜ばせたい」という気持ちが語られました。
それをぞうくんはずっと知って、理解していました。
ぺがさすちゃんも、らいおん君のそんな一面にどこかで気づいていたのでしょう。
そしてこの歌詞を通して、ぺがさすちゃんは「あなたも気づかないうちに、その思いは伝わっている、愛されているんだよ」と伝えようとしているのです。
これは、観客へのメッセージとしても響く一節かもしれません。
映画中はこの辺りで台詞などが重なり、歌詞が聞き取りづらくなっています。
以下は続きの歌詞に考察を乗せてご紹介します。
「完璧じゃない私たち」が支え合う強さ
(弱さは強さ)それさえも
映画『たべっ子どうぶつ』劇中歌『翼も角もなくたって』より引用(一部)
(強さは弱さ)私もなにしてるんだろう
このフレーズは、強さと弱さが表裏一体である…。
弱さと向き合ってこそ本当の強さを知る事が出来ることを知りながら、素直になれない自分への小さな苛立ちと、少しずつ前に進もうとする意志を感じさせます。
言えなかったけど 伝えたい 張り裂けそうな痛み
映画『たべっ子どうぶつ』劇中歌『翼も角もなくたって』より引用(一部)
ねぇ 聞いてよ
完璧じゃないから 助けたいんだよ
完璧じゃないから 助けて欲しいんだよ
表面上は華やかで、翼も角もあるペガサスのように見えていた彼女ですが、ユニコーンであると隠してしまう後ろめたさがありました。
強くなければと背伸びしていました。
でも、「完璧じゃない」からこそ、助けて、助けられる。
その関係こそが、仲間としての在り方なのだと気づいていきます。
この考え方は、映画に登場する他のキャラクターにも共通しています。
一例として裏方としてチームを支えるわにくんは、頼れる技師でありながら、年長者として見守る存在。
自由にのびのびと歌えるようにぺがさすちゃんに翼を作ったのも彼でした。
わにくんの静かな優しさと技術が、彼女の夢を支えていたのです。
歌は次の歌詞で締めくくられます。
君の笑顔は…」余白を残す結末の意味
君の笑顔は きっと…。
映画『たべっ子どうぶつ』劇中歌『翼も角もなくたって』より引用(一部)
と、聴き手に続きを委ねるような余白のある言葉です。
歌詞に余韻を残し、想像をかき立てられる終わり方です。
これは物語が続いていく示唆も感じます。
そしてエピローグではらいおんくんとぺがさすちゃんがそれぞれ翼を付けて一緒に飛んでいるシーンも切り取られています。
映画の幕間も想像出来るような終わり方ですね。
ペガサスちゃんの声優は誰?他の歌はある?
声優・髙石あかりさんのプロフィール
ぺがさすちゃんの声優、髙石あかりさんは2002年12月19日生まれ、宮崎県出身。
エイベックス・マネジメント・エージェンシーに所属し、身長は160cmです。
特技は歌とダンスで、趣味はアニメ鑑賞や裁縫など多岐にわたります。
2014年にエイベックス主催のキッズオーディションでナルミヤオンライン賞を受賞し、芸能界入り。
ダンスボーカルグループ「α-X’s」の活動を経て、2019年から女優業を本格化させました。
映画『ベイビーわるきゅーれ』シリーズでの主演や、舞台『鬼滅の刃』での禰豆子役など、幅広いジャンルで活躍しています。
声優としては、アニメーション映画『きみの色』(2024年公開)で初挑戦し、作永きみ役を演じました。
劇中では、バンドのボーカルとして劇中歌『水金地火木土天アーメン』を披露し、その歌声が話題となりました 。
2025年後期には、NHK連続テレビ小説『ばけばけ』のヒロインに抜擢され、今後の活躍がますます期待されています。
ペガサスちゃん役での魅力的な演技
『たべっ子どうぶつ THE MOVIE』では、髙石さんが演じるぺがさすちゃんが劇中歌「翼も角もなくたって」を静かに歌い上げるシーンが印象的です。
彼女の透明感のある歌声は、ぺがさすちゃんの内面の葛藤や成長を繊細に表現し、観客の心を打ちます。
髙石さん自身も
「声優というお仕事が今回で2回目になるんですけど、やっぱり難しいですね。
戦うときの息づかいであったりとか…ぺがさすちゃんというキャラクターは、いろんな感情、要素が含まれているキャラクターだったので」
と語っており、役作りに真摯に取り組んだ様子が伺えます。
共演者のTravis Japan・松田元太さんも彼女の歌唱力を
「リスペクトするし、嫉妬するレベル」
と絶賛しており、プロとしての実力が高く評価されています。
まとめ|『たべっ子どうぶつ』とペガサスちゃんが伝える心の変化
映画『たべっ子どうぶつ THE MOVIE』において、ペガサスちゃんが静かに歌い上げる「翼も角もなくたって」は、彼女の内面の成長と仲間とのつながりを象徴する大切な歌です。
ユニコーンという孤独や強さを背負う存在でありながら、ペガサスちゃんは「完璧じゃなくてもいい」と気づいていきます。
助け、助けられること――それこそが仲間との絆であり、本当の強さなのだと彼女は歌を通して私たちに伝えてくれます。
この歌詞に込められた心の揺らぎや変化は、観る人自身の感情とも重なり、深い余韻を残します。
そしてこの楽曲がより印象的なのは、演じる髙石あかりさんの繊細で透明感のある歌声と演技力があってこそ。
彼女の表現によって、ペガサスちゃんというキャラクターがより立体的に描かれています。
『たべっ子どうぶつ』は、かわいらしいキャラクターたちの物語の中に、「違いを認め合うこと」「不完全であることの美しさ」といった普遍的なテーマを丁寧に描き出した作品でもあるのです。
次回は、エンディングテーマ「Would you like one?」に込められた想いと、らいおんくんや松田元太さんのキャラクター性にフォーカスしてお届けします。どうぞお楽しみに!